誰でも衝動買いをすることがある。私もそう。
あなたの場合、その衝動はどこから来るのだろうか?
専門家やFP、インフルエンサーたちは、支出を減らして貯蓄を増やせと言うが、自分の「買いたい」衝動が起こる根本的な原因が分からなければ、それは難しいかもしれない。
最も一般的な衝動買いの原因とされるのは、以下の9つとされている。
これらを理解した上で、日々の購買行動を行うことで、買い物で失敗する回数を減らせるはずである。
「ショッパーズ・ハイ」の快楽を得たい
ランナーズハイと似たようなものだ。
ランナーズハイ=走った後に短時間訪れる強い幸福感のことであり、「セロトニン」と呼ばれる幸福ホルモンが放出される。ポジティブで前向きな気分にさせてくれたり、不安感を和らげて精神を安定させる働きがある。
ただし、ショッパーズ・ハイはお金がかかる上に、ランナーズハイの幸福ホルモンとは異なる、
「ドーパミン」が放出されることが分かっている。
「ドーパミン」は短期的快楽に寄与するホルモンであり、仕事や勉強に取り入れれば、効果的に働くが、買い物依存症や中毒にもなどの症状にも大きく関わっている
買い物が、一時的な悲しみや怒り、孤独感を鎮めてくれる効果は確かに存在する。
しかし、このドーパミンによる一時的な幸福感は、実際には長続きせず、再びその感覚を求めて買い物を繰り返すことになる。このような衝動を制御するためには、買い物以外の健康的な方法でストレスを解消することが必要だ。
酔っている状態での買い物
米国人を対象とした最近の調査では、不愉快なことが原因で飲酒し、酔った状態にあるとき、無駄遣いしてしまう金額は平均139ドル(1万5,500円)であるそう。
さらに、男性が無駄遣いする金額は女性の4倍以上になる。飲酒により自制心が低下し、冷静な判断ができなくなるため、必要のないものまで買ってしまうことが多い。
酔った状態では、脳の前頭葉の活動が抑制されるため、計画的な思考や自己制御が難しくなる。
このため、その場の気分や欲望に従って無駄な買い物をしてしまうことがよくある。
例えば、酔った勢いでオンラインショッピングを楽しんだり、バーやクラブで高価なドリンクを頼んだりすることがある。
また、酔った状態では他人の勧めに対しても抵抗が弱まり、必要ない商品やサービスを購入してしまうことがある。
さらに、飲酒は気分を高揚させ、一時的に幸福感を増幅させるため、その瞬間の快楽を求めて高価な買い物をすることがある。
しかし、このような衝動的な買い物は後で後悔することが多く、経済的なストレスを引き起こす原因にもなる。酔った状態での買い物を避けるためには、飲酒後はオンラインショッピングサイトを閉じたり、クレジットカードを使わないようにするなどの対策が有効だ。
空腹である
空腹時には、私たちの身体はエネルギーを補充するために食べ物を強く求める。
この生理的な欲求が、他の欲望にも影響を与えることがある。
例えば、スーパーに空腹のまま行くと、必要以上に食べ物を買ってしまうことがよくある。これは、身体が食べ物を求めるサインを送り続けるため、無意識のうちに多くの食材やお菓子をカートに入れてしまうからだ。
動経済学では、この行動を「投影バイアス」という心理によって、おなかがすいた状態が将来も続くかのように思い込んだ結果だと分析している。
さらに、空腹は血糖値の低下を引き起こし、これが脳の働きを鈍らせ、冷静な判断ができなくなる原因となる。
このため、空腹時には食品だけでなく、衣服や雑貨などの非食品アイテムにも衝動的に手を出してしまうことがある。
また、空腹時にはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加し、これがさらなる衝動買いの引き金となることもある。
ミシガン大学の2015年の調査では、お腹が空くと私たちの体は栄養になるものを探して取り入れようとするが、その「取り入れたい」感覚が、食べ物以外にも向くようだ。
空腹の人は、そうでない人より60%多い金額を使うという調査結果もある。これは、空腹が認知機能を低下させ、判断力を鈍らせるためだと言われている。
衝動買いを防ぐためには、買い物をする前に軽食を取ることや、空腹時にはショッピングを避けるなどの対策が有効だ。
悲しい、または怒っている
悲しみや怒りなどのネガティブな感情は、私たちの意思決定に強い影響を与える。
感情的に不安定な状態では、自己制御が難しくなり、その場の感情を和らげるために衝動的な行動を取ることが増える。
そうすることで、「短期的に」幸福感を得ることができるからだ。
このような感情に基づいた買い物行動は「感情的消費」とも呼ばれ、短期的には気分を良くする効果があるが、長期的には後悔や財政的な負担を引き起こすことが多い。
また、悲しみや怒りを感じているときには、脳内の報酬システムが過剰に活性化しやすくなり、買い物を通じて一時的な快楽を求める傾向が強くなる。
このとき、購入したアイテムそのものが重要なのではなく、その行為がもたらす一瞬の幸福感やストレス解消が目的となる。その結果、必要性や価値を考慮せずに商品を購入してしまうことがある。
例えば、仕事で大きなストレスを感じているときに、高価な服やアクセサリーを衝動的に購入することがある。
このような行動は、一時的には満足感を与えるかもしれないが、後で後悔し、財政的な負担となることが多い。長期的な視点で見ると、感情に基づいた買い物は問題の根本的な解決にはならず、むしろ新たな問題を引き起こすことがある。
例えば、悲しみや怒りから逃れるために、新しい服やガジェットを購入することがある。しかし、これらの感情に基づいた買い物は一時的な満足感しかもたらさず、後で後悔することも多い。
孤独である
孤独感を感じると、人はその感情を埋めるために買い物をすることがある。
物質的なものを手に入れることで、一時的にでも満足感や幸福感を得ようとするのだ。
このような行動は「補償的消費」とも呼ばれ、感情の欠如を埋めるために行われる。例えば、孤独なときに高価な服やアクセサリー、ガジェットなどを購入することで、孤独感を和らげようとする。
しかし、このような行動は一時的な解決策に過ぎない。
物質的なものは一時的な満足感を与えるかもしれないが、孤独感の根本的な問題を解決することはできない。
実際には、買い物によって得られる満足感は短期間で薄れ、再び孤独感が襲ってくることが多い。このサイクルは物質主義を増長させ、さらなる消費を促進する悪循環に陥る可能性がある。
また、孤独感と物質主義の関係は双方向である。物質主義的な価値観を持つ人々は、物を手に入れることを通じて自分の価値を測る傾向があるが、これは本質的な人間関係を築くことを難しくする。
物質的な成功や所有物に依存することで、他者との深いつながりを築く機会を逃してしまうことがある。この結果、孤独感が増し、再び物質的なものを求めるという悪循環に陥ることがある。
このように、物質的なものに頼ることで一時的な慰めを得ることができても、根本的な孤独感は解消されず、さらなる買い物を誘発する悪循環に陥ることがある。
「自分にご褒美」が当たり前
「自分へのご褒美」は自己肯定感や自己報酬の感覚から生まれる。
仕事や家庭での努力やストレスを解消する手段として、自分に何かを買ってあげることは一見、健全な行為に思える。このような行動は、一時的な幸福感や満足感を得る手段となる。
しかし、過度な自己報酬は財政的な負担を増やし、長期的には経済的な問題を引き起こす可能性がある。
「自分へのご褒美」の文化は、現代の消費社会において広く受け入れられている。広告やメディアは、「頑張った自分にはご褒美が必要だ」というメッセージを繰り返し伝えている。
これにより、多くの人が自分を甘やかすための買い物を正当化するようになる。しかし、これが習慣化すると、ストレスや疲れを感じるたびに買い物をすることが常態化し、無駄遣いが増える原因となる。
また、自己報酬の買い物は、一時的な満足感を得る手段として効果的だが、その効果は長続きしないことが多い。購入後に再びストレスや不満を感じると、再び買い物をして自己報酬を求めるサイクルに陥ることがある。このような行動は、物質的な所有物に依存する生活を助長し、本質的な問題解決にはつながらない。
さらに、買い物を通じた自己報酬は、他の健康的なストレス解消法を見逃す原因にもなる。
例えば自分に価値を見出すための方法として、運動や趣味、友人との交流など、非物質的な方法でストレスを解消することは、長期的にはより持続可能で満足度の高い方法となる。
買い物以外の健康的な選択肢を見つけることが重要だ。
これらの方法は、自己肯定感を高め、内面的な充実感を得る手段として効果的だ。
「今買わないと損」だと思う
バーゲンで購入した商品のうち、最近買ったものからさかのぼって5つ目までの中に着ていない、または使っていないものがあるだろうか?
あったとすれば、あなたは単に、何か手に入れることでワクワクしたかっただけかもしれない。
バーゲンやセールの誘惑に負けて、本当に必要ないものまで買ってしまうことがある。
これは、「今買わないと損をする」という心理的な圧力に起因する。実際には、必要なものでない限り、どんなに安くても損をすることになる。
流行に乗り遅れたくない
大人の世界の「仲間からの圧力」だ。
友人や隣人が何かを持っているから、あなたもそれが欲しいと思ってしまう。
だが、それは本当にあなた欲しいものだろうか?
それに、それを買うだけの余裕はあるのだろうか?
流行を追いかけることで自分のアイデンティティや満足感を得ようとすることは、長期的には無駄な出費に繋がることが多い。自分自身の価値観やニーズを見直し、本当に必要なものを見極めることが大切だ。
昇給した、臨時収入があった
これも、多くの人に当てはまる自然の衝動であるし、悪いことではない。
昇給や税金の還付など、予定外の収入があれば、休暇を取ってぜいたくをしたり、もっと良い車に買い替え替えたり、良い部屋に引っ越したり、外食の回数が増えたりする。
このような臨時収入は、普段の生活では抑えている欲望を解放する機会となる。
しかし、計画的に使わなければ、一時的な贅沢が将来の財政計画を乱すことになる。
臨時収入を得た際には、まずは貯蓄や投資に回すことを考えるべきだ。
手っ取り早い解決策がほしい
時間と労力の節約には、お金がかかる。
分かりやすい例が、食事だ。
食料品店で材料を買って料理をすれば、外食するよりお金を節約できる。だが、時間は余計にかかる。
お金を払って誰かに何かをしてもらい、時間を節約することが重要な場合もある。
カギは、本当にそうする価値があるのはどんな時かを理解しておくことだ。
例えば、忙しい日常の中で家事代行サービスを利用することで、ストレスを軽減し、より多くの時間を有効に使うことができる。
しかし、これが習慣化すると、財政的な負担が増すことになるため、バランスを見極めることが重要だ。
まとめ
自分は上記のどれにも該当しないという人は、過去一か月間に何を買ったか(特に、無計画な買い物について)、その時どんな気持ちだったかを思い出してよく考えてみよう。
アップルストアに行ったのは、上司に腹を立てた日だった?
食料品を買いすぎたのは、朝食抜きで15km以上ランニングした日だっただろうか?
実際のところは、自分自身にしか分からないのだ。自分の行動を振り返り、衝動買いのパターンを理解することで、今後の無駄遣いを防ぐ手助けになる。
参考文献